窿形《きゅうりゅうけい》の橋の上まで腹ばいになって進んでいった。
 勇敢なるモンテーナール大佐は、身を震わしながらその防寨を嘆賞した。彼はひとりの代議士に言った。「うまく築いたものだ[#「うまく築いたものだ」に傍点]! 一つの不ぞろいな舗石もない[#「一つの不ぞろいな舗石もない」に傍点]。まるで磁器ですね[#「まるで磁器ですね」に傍点]。」その時、一発の弾は、彼の勲章を打ち砕いた。彼は倒れた。
「卑怯者《ひきょうもの》め!」とある者は言った、「姿を現わせ、見える所に出てこい。それができないのか。隠れてばかりいるのか!」
 しかしこのタンプル郭外の防寨《ぼうさい》は、八十人の者に守られ一万の兵に攻撃されて、三日の間持ちこたえた。四日目に、ザアチャーやコンスタンティーヌの都市になされたのと同様の方法が用いられ、人々は人家をうがち、または屋根に伝わり、そしてついに防寨は占領された。八十人の「卑怯者」らのうちひとりとして逃げようとはしなかった。皆そこで戦死を遂げた。ただひとり首領のバルテルミーだけは身を脱したが、彼のことはすぐ次に述べるとおりである。
 サン・タントアーヌの防寨は雷電のはためき
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