大にも見棄《みす》てられることに同意する。障害に対しては不屈であり、忘恩に対しては柔和である。
 とはいえ、そもそもそれは、忘恩であろうか?
 しかり、人類の見地よりすれば。
 否、個人の見地よりすれば。
 進歩は人間の様式である。人類一般の生命を進歩[#「進歩」に傍点]と称する。人類の集団的歩行を進歩[#「進歩」に傍点]と称する。進歩は前進する。それは天国的なるものおよび神的なるものの方へ向かって、地上的な人間的な大旅行を試みる。けれども落伍者《らくごしゃ》を収容するための休憩所を持っている。ある燦然《さんぜん》たるカナンの地([#ここから割り注]訳者注 神がイスラエル人に与うべきことを約束せる土地―旧約[#ここで割り注終わり])が突然地平線上に現われるのを前にして、瞑想《めいそう》するための停立所を持っている。眠るべき夜を持っている。そして、人間の魂の上に影がおりているのを見、眠ってる進歩を暗黒のうちに探りあてながらそれをさまし得ないということは、思想家の深い痛心の一つである。
「おそらく神は死んでる[#「おそらく神は死んでる」に傍点]」とジェラール・ド・ネルヴァルは本書の著者に向
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