があると思いますか。」
「確かにある。」
「ではそれを一つ求めます。」
「何を?」
「その男を自分で射殺することです。」
ジャヴェルは頭を上げ、ジャン・ヴァルジャンの姿を見、目につかぬくらいの身動きをして、そして言った。
「正当だ。」
アンジョーラは自分のカラビン銃に弾をこめ始めていた。彼は周囲の者を見回した。
「異議はないか?」
それから彼はジャン・ヴァルジャンの方を向いた。
「間諜《スパイ》は君にあげる。」
ジャン・ヴァルジャンは実際、テーブルの一端に身を置いてジャヴェルを自分のものにした。彼はピストルをつかんだ。引き金を上げるかすかな音が聞こえた。
それとほとんど同時に、ラッパの響きが聞こえてきた。
「気をつけ!」と防寨《ぼうさい》の上からマリユスが叫んだ。
ジャヴェルは彼独特の声のない笑いを始めた。そして暴徒らをじっとながめながら、彼らに言った。
「きさまたちも俺《おれ》以上の余命はないんだ。」
「みんな外へ!」とアンジョーラは叫んだ。
暴徒らはどやどやと外に飛び出していった。そして出てゆきながら、背中に――こう言うのを許していただきたい――ジャヴェルの言葉を受け
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