はいけない。間もなく襲撃の太鼓が聞こえたら、階下《した》の二十人は防寨に走り出ろ。早い者から勝手にいい場所を占めるんだ。」
そういう手配りをした後、彼はジャヴェルの方を向いて、そして言った。
「きさまのことも忘れやしない。」
そしてテーブルの上に一梃のピストルを置いて、彼は言い添えた。
「ここから最後に出る者が、この間諜《スパイ》の頭を打ちぬくんだ。」
「ここで?」とだれかが尋ねた。
「いや。こんな死体をわれわれの死体に交じえてはいけない。モンデトゥール街の小さな防寨《ぼうさい》はだれでもまたぎ越せる。高さ四尺しかない。こいつは堅く縛られてる。そこまで連れていって、そこで始末するがいい。」
その際に及んで、アンジョーラよりなお平然たる者があるとすれば、それはジャヴェルであった。
そこにジャン・ヴァルジャンが出てきた。
彼は暴徒らの間に交じっていたが、そこから出てきて、アンジョーラに言った。
「君は指揮者ですか。」
「そうだ。」
「君はさっき私に礼を言いましたね。」
「共和の名において。防寨はふたりの救い主を持っている、マリユス・ポンメルシーと君だ。」
「私には報酬を求める資格
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