やられた。白鳥がやってきた時に、杖は菓子に届いた。子供は一つ強くたたいてそれを引きよせ、白鳥をおどかし、菓子をつかみ取り、そして立ち上がった。菓子はぬれていたが、ふたりは腹がすき喉《のど》がかわいていた。兄はその菓子パンを、大きいのと小さいのと二つに割り、自分は小さい方を取り、大きい方を弟に与えて、こう言った。
「それをつめ込んでしまえ。」

     十七 死せる父死なんとする子を待つ

 マリユスは防寨《ぼうさい》から外に飛び出した。コンブフェールもそのあとに続いた。しかしもう間に合わなかった。ガヴローシュは死んでいた。コンブフェールは弾薬の籠《かご》を持ち帰り、マリユスはガヴローシュの死体を持ち帰った。
 彼は思った。ああ、父親が自分の父にしてくれたことを、自分は今その子に報いているのだ。ただ、テナルディエは生きた自分の父を持ち帰ってくれたが、自分は今彼の死んだ子を持ち帰っているのか。
 マリユスがガヴローシュを胸にかかえて角面堡《かくめんほう》に戻ってきた時、少年の顔と同じく彼の顔も血にまみれていた。
 ガヴローシュを抱き取ろうとしてかがんだ時、一弾が彼の頭をかすめた。彼はそれ
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