]若い枝は――ブールボン分家は[#ここで割り注終わり])挫《くじ》かれる。早く帰ろう。」
「白鳥がお菓子を食べる所が見たいなあ。」と子供は言った。
 父は答えた。
「そうしては不用心だ。」
 そして彼は自分の小さな市民を連れていった。
 子供は白鳥の方を残り惜しがって、五目形の植え込みの角《かど》に池が隠れるまで、その方を振り返ってながめた。
 そのうちに、白鳥と同時にふたりの浮浪の子供が菓子パンに近寄ってきた。菓子は水の上に浮いていた。弟の方は菓子をながめ、兄の方は去ってゆく市民をながめていた。
 父と子とは入りくんだ道をたどって、マダム街の方へ通ずる段をなした木の茂みにはいっていった。
 彼らの姿が見えなくなると、すぐに兄は、丸みをもった池の縁に腹ばいになり、左手でそこにしがみつきながら、ほとんど水に落ちそうになるほど身を乗り出し、右手を伸ばしてその杖を菓子の方へ差し出した。白鳥は競争者を見て急いだ。しかし急ぎながら胸をつき出したので、小さな漁夫にはそれがかえって仕合わせとなった。水は二羽の白鳥の前に揺れて退いた。そのゆるやかな丸い波紋の一つのために、菓子は静かに子供の杖の方へ押し
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