にいた例の髪の長い男で、ブリュジョンという名だった。彼はシャールマーニュの庭に解放されて、常に監視された。
このブリュジョンという名前は、フォルス監獄で古なじみの名前の一つだった。役人の方ではサン・ベルナールの庭と呼び、囚人の方では獅子《しし》の窖《あなぐら》と呼び、普通にはバーティマン・ヌーフの庭と言われているあの嫌悪《けんお》すべき中庭の、左手は屋根の高さまで高まっていて垢《あか》や黴《かび》が一面についてる壁の上、昔はフォルス公爵の邸宅の礼拝堂だったが今では囚人の寝室になってる建物の方へ通ずる、錆《さ》びた古い鉄の戸があるあたりに、十二年前までは石に釘《くぎ》で荒々しく彫りつけた一種の牢獄の図が見えていた。そしてその下に、「一八一一年[#「一八一一年」に傍点]、ブリュジョン[#「ブリュジョン」に傍点]」と署名がしてあった。
この一八一一年のブリュジョンは、一八三二年のブリュジョンの父であった。
読者がゴルボー屋敷でちょっと紹介された後者ブリュジョンは、きわめて狡猾怜悧《こうかつれいり》な快青年であったが、狼狽《ろうばい》したような訴えるような様子をしていた。密室に置くよりも
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