シャールマーニュの庭に置いた方が役に立つだろうと思って、予審判事が彼を解放したのは、その狼狽したような様子のためだった。
 盗賊らは裁判官の手中に陥ったからといって仕事をやめるものではない。それくらいのことではびくともしない。一罪悪のために入獄しても、やはり同じように他の罪悪に着手する。彼らは美術家のような者であって、展覧会に一枚の画面を出していてもなお常に画室では新しい制作に取りかかる。
 ブリュジョンは監獄に下されたため呆然《ぼうぜん》としたらしかった。時としては、シャールマーニュの庭で、酒保の窓下に幾時間も立ちつくして、韮《にら》六十二サンチーム[#「六十二サンチーム」に傍点]というので始まり葉巻き煙草五サンチーム[#「葉巻き煙草五サンチーム」に傍点]というので終わってるその薄ぎたない定価表を、白痴のようにながめてることもあった。あるいはまた始終身を震わし歯をうち合わして、熱があると言い、病舎の二十八の寝台のどれかがあいてはいないかと尋ねていた。
 ところが不意に、一八三二年二月の末に、次の事実が露見した。その眠ってるようなブリュジョンは、そこの小僧に頼んで、自分の名前でなく仲間
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