ネわち足を引っぱった。そして間もなく、前後不覚に眠ってる田舎者は舗石《しきいし》の上に平たくつっ伏してしまった。
荷車は自由になった。
どういう場合にも不意のことに立ち向かうのになれてるガヴローシュは、いつもあらゆる物を身につけていた。彼は一つのポケットを探って、一枚の紙片とある大工の所から盗んできた赤鉛筆の切れ端とを取り出した。
彼は書きつけた。
[#ここから4字下げ]
汝の車をもらい受く。
フランス共和政府[#「フランス共和政府」に傍点]。
[#ここで字下げ終わり]
そして「ガヴローシュ」と署名した。
それから彼は、相変わらず鼾をかいてる田舎者のビロードのチョッキのポケットにその紙片を入れ、両手に梶棒《かじぼう》をつかみ、荷車を自分の前に大駆けに押しやって勢いのいい勇ましい響きを立てながら、市場町の方へ走っていった。
それは危険なことだった。国立印刷局に兵士の衛舎があった。ガヴローシュはそのことを頭に浮かべなかった。衛舎には郊外の国民兵らが駐屯《ちゅうとん》していた。衛兵らはしだいに注意を呼びさまされ、たたみ寝台の上に頭をもたげた。相次いでこわされた二つの
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