「恋歌はあと回しだ。」と彼は言った。
 彼の猫《ねこ》のような目は、ある表門のひっこんだ所に、絵画でいわゆる配合と称するところのものを見つけたのである。言い換えれば人物と物とであった。物というのは、一つの荷車で、人物というのは、その中に眠ってるひとりの田舎者《いなかもの》だった。
 荷車の柄は舗石《しきいし》の上におろされてい、田舎者の頭は荷車の前板の上にたれていた。身体はその斜めの前板の上に長くなって、足は地面に触れていた。
 ガヴローシュはそういう仲間のことをよく知っていたので、その男が酔っ払ってることを見て取った。
 それはどこかの運搬人夫で、あまり酒を飲みすぎて、あまりぐっすり眠りすぎてるのだった。
「夏の夜もちっとは物の役に立つんだな。」とガヴローシュは考えた。「田舎者は荷車の中に眠らしてやがる。荷車の方は共和政府で取り上げて、田舎者の方は王の政府にくれてやれ。」
 彼の頭には次のような光明が輝いたのだった。
「この荷車は防寨《ぼうさい》に積むに持ってこいだ。」
 田舎者《いなかもの》は鼾《いびき》をかいていた。
 ガヴローシュはそっと、荷車を後ろから引き、田舎者を前からす
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