ャ刀Eヴァルジャンは確かに、自らほとんど気づかずにそういう運動の衝動に駆られたのであろう、四、五分経つともう街路に出ていた。
 彼は帽子もかぶらず、家の入り口にある標石に腰をおろしていた。何かに耳を澄ましてるがようだった。
 もう夜になっていた。

     二 灯火《あかり》の敵たる浮浪少年

 どれだけの間彼はそのままでいたか。その悲壮な瞑想《めいそう》の干満はいかなるものであったか。彼はまたたち上がったか、屈服したままでいたか、破れ裂けるまで身をかがめていたか、またはなお立ち直って何か強固なものの上に本心の足をふみしめることができたか。おそらく彼自身でもそれに答えることはできなかったであろう。
 街路はひっそりと静まり返っていた。急ぎ足で家に帰ってゆく不安な市民も二、三通りかかったが、ほとんどジャン・ヴァルジャンに気づきもしなかった。危急の場合にはだれも自分のこときり考えられないものである。点灯夫はいつものとおりやってきて、ちょうど七番地の家の正面にある街灯に火をともして、また立ち去っていった。その時影のうちにあるジャン・ヴァルジャンの姿は、おそらく生きてる人とは思えなかったろう
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