゚痛であり、老年になっては悲惨である。血は熱く、頭髪は黒く、蝋燭《ろうそく》の炎のように頭は身体の上にまっすぐに立ち、運命の巻き物はまだ太く、心は希望の愛に満ちてなおときめくことあり、前途にはなお償いの時間を有し、あらゆる婦人と微笑と未来と地平とが前にあり、生の力が充実している、そういう時に当たっても、絶望は一つの恐るべきものであるとするならば、年月はますます淡く過ぎてゆき、墳墓の星が見えそむる夕暮れの時間たる老年においては、それはおよそいかなるものであろうか!
ジャン・ヴァルジャンが思いに沈んでいる時、トゥーサンがはいってきた。彼は立ち上がって、そして尋ねた。
「どの方面だか、お前知っているか。」
トゥーサンはあっけにとられて、ただこう答えるのほかはなかった。
「何でございますか。」
ジャン・ヴァルジャンは言った。
「さっきお前は、戦いが始まってると言ったのではなかったかね。」
「ああそのことでございますか、旦那様《だんなさま》、」とトゥーサンは答えた、「サン・メーリーの方でございますよ。」
人には自ら知らず知らずのうちに、最も深い考えの底から発してくる機械的な運動がある。ジ
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