ヒ然、彼の目はまた鏡の上に落ちて、そこに再び幻を見た。数行の文字は、ごまかし得ない明確さで再び現われていた。こんどはもはや幻覚ではなかった。幻も二度まで現わるればもはや現実となる。それははっきり知覚し得らるるものであった。鏡の中に映し出された文字だった。彼は了解した。
ジャン・ヴァルジャンはよろめいて、吸い取り紙を手から落とし、食器棚《しょっきだな》の傍《そば》にある古い肱掛《ひじか》け椅子《いす》に倒れかかり、頭をたれ、目を白くし、昏迷《こんめい》に陥った。彼は自ら言った、これは明瞭なことである、世の光は永久に陰ってしまった、コゼットはそれをだれかに書いたのであると。その時彼は、自分の魂が再び獰猛《どうもう》になって、闇《やみ》の中に鈍いうなり声を発してるのを聞いた。今は直ちに、檻《おり》の中に入れていた自分の犬を獅子《しし》の手から奪い返しに行くべきである!
奇怪なまた悲しいことではあるが、その時マリユスはまだコゼットの手紙を受け取っていなかった。偶然の機会は、それをマリユスに渡す前に不実にもジャン・ヴァルジャンに渡してしまったのである。
ジャン・ヴァルジャンはその日に至るま
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