黷ヘ明白なまた恐ろしいことであった。
 ジャン・ヴァルジャンは鏡の前に進んだ。そして数行の文字を再び読み返したが、現実だとは信じ得なかった。あたかも稲妻の中に現われたもののような気がした。おそらく幻覚であろう。あり得べからざることである。実際に存しないことである。
 けれどもしだいに彼の知覚はますますはっきりしてきた。彼はコゼットの吸い取り紙をながめ、再び現実の感が戻ってきた。彼は吸い取り紙を取り上げて言った。「これからきたんだ。」そして吸い取り紙の上に残ってる数行を、変な形になってる逆の文字を、熱心に調べてみたが、何の意味をも読み取ることはできなかった。その時彼は自ら言った、「これはまったく意味のないことだ、何も書いてあるわけではない。」そして言うべからざる安堵《あんど》の思いに深く息をした。およそだれか、恐るべき瞬間においてかかる愚かな喜悦を感じなかった者があろうか。人の魂は、あらゆる幻を汲みつくした後でなければ、容易に絶望に屈しないものである。
 彼は吸い取り紙を手に持って、他愛もない喜びに浸り、欺かれた幻覚に対して今にも笑い出さんばかりになり、それをじっとうちながめた。ところが
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