チて、多少の青空を認めさせる助けとなった。何の変事も起こらず無事にプリューメ街を去ったのは、既に幸先《さいさき》のいい一歩だった。これからたとい数カ月でも国を去ってロンドンに行くことは、おそらく賢いやり方に違いない。皆で行ってしまおう。フランスにいることもイギリスにいることも、傍《そば》にコゼットさえいてくれれば結局同じだった。コゼットのみが彼の故国だった。コゼットさえあれば彼は十分幸福だった。そして、コゼットにとっては自分がいるだけではおそらく十分の幸福とはなり得まいという考え、前に彼の煩悶《はんもん》の種となり不眠の種となった考えも、今は彼の頭に浮かんでこなかった。彼はあらゆる過去の苦悶から解脱して、深い楽観のうちにはいっていた。コゼットは自分の傍にいるからまったく自分のものであるような気がしていた。そういう気持ちはだれでも経験する一種の幻覚である。彼は種々楽しい考えにふけりながら心のうちで、コゼットを連れてイギリスへ行く計画をめぐらした。そしてどこということもなく自分の夢想のうちに、幸福の幻をうち立ててながめていた。
 かくして静かに室《へや》の中を歩き回っていたが、突然異様なも
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