ヨ子が数個、それきりだったが、後はそれでも心地よい室《へや》だと思った。トゥーサンの包みの一つには、ジャン・ヴァルジャンの国民兵の正服がすき間から見えていた。
 コゼットの方は、トゥーサンに言って自分の室に汁《しる》を一杯持ってこさせ、晩になるまで姿を見せなかった。
 五時ごろ、忙しく片付け物をしながら行ききしていたトゥーサンは、食卓の上に鶏の冷肉を出した。コゼットも父に対する尊敬からそこに出てはきたが、ただ一目見たばかりで食べはしなかった。
 それから、コゼットはなお頭痛がやまないと言って、ジャン・ヴァルジャンに別れの言葉をかけ、自分の寝室にとじこもった。ジャン・ヴァルジャンはうまそうに鶏の一翼を食べ、テーブルの上に肱をつき、しだいに心が平静になって、再び身の安全を信ずることができた。
 その質素な食事をしている間に、トゥーサンが吃《ども》りながら二、三繰り返して言う言葉を、彼は漠然《ばくぜん》と耳に聞いていた。「旦那様《だんなさま》、騒ぎがもち上がっていますよ。パリーで戦いが始まっていますよ。」しかし彼は内心の種々な思いにふけって、それに少しも注意を向けなかった。実を言えば、彼には
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