tを呼んできて、それに乗って立ち去ってしまった。
 トゥーサンはようやくにして、わずかなシャツや着物や多少の化粧品を包みにして携えることを許され、コゼットの方は、ただ文房具と吸い取り紙とだけを持っていった。
 ジャン・ヴァルジャンはその出立の跡をなおいっそうくらますために、プリューメ街に面した家の方は日が没してから立ち退《の》くようにさした。そのためコゼットはマリユスに一言手紙を書く暇を得た。オンム・アルメ街に着いた時はもうすっかり夜になっていた。
 皆は黙々として床についた。
 オンム・アルメ街の住居は、後庭に面した三階で、二つの寝室、一つの食堂、食堂に付属した一つの料理場、それからトゥーサンにあてられたたたみ寝室のある小部屋がついていた。食堂は同時に控え室になって、二つの寝室の間にはさまっていた。各室にはそれぞれ必要な道具が備わっていた。
 いったい人はばかばかしく心配したり、ばかばかしく安心したりする。人間の性質はそうしたものである。ジャン・ヴァルジャンの心痛も、オンム・アルメ街に到着すると、明るくなってしだいに消えうせてしまった。ほとんど機械的に人の心を静める場所が世にはある。
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