gと黒い天使とは、深淵に架した橋の上でつかみあっていた。いずれが相手を投げ落とすであろうか? いずれが勝利を得るであろうか?
 この六月五日の前日、ジャン・ヴァルジャンはコゼットとトゥーサンとを伴って、オンム・アルメ街に引き移った。そこで大事件が彼を待ち受けていたのである。
 コゼットはプリューメ街を去ることに多少の異議を試みてみた。ふたりがいっしょに暮らすようになってから始めて、コゼットの意志とジャン・ヴァルジャンの意志とは、互いにはっきり異なって、衝突はしなくとも矛盾した。一方に異議があり、一方に頑強《がんきょう》があった。見知らぬ男がジャン・ヴァルジャンに投げ与えた「引っ越せ[#「引っ越せ」に傍点]」という突然の忠告は、非常に彼を脅かして頑固ならしめた。彼は官憲から見現わされ跡をつけられてると思った。コゼットも譲歩しなければならなかった。
 ふたりとも、口をきっと結び、一言も発せず、自分の考えに没頭して、オンム・アルメ街に到着した。ジャン・ヴァルジャンはコゼットの悲しみに気づかないほど不安であり、コゼットはジャン・ヴァルジャンの不安に気づかないほど悲しんでいた。
 ジャン・ヴァル
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