竄チつけられてたんだ。」
「この手紙だがね。」
「うむ。」
「これを持って、すぐに防寨《ぼうさい》を出てくれ。(ガヴローシュは不安そうな様子だったが、こんどは耳をかき始めた。)そして明日の朝、あて名の人へ、オンム・アルメ街七番地のフォーシュルヴァン氏方コゼット嬢へ、それを届けてくれ。」
 勇壮な少年は答えた。
「だが、その間に防寨は落ちて、俺は間《ま》に合わなくなるだろう。」
「防寨は、すべての様子から察すると、夜明けにしか攻撃されない、そして明日《あす》の午《ひる》までは陥落しない。」
 襲撃軍が新たに防寨《ぼうさい》に与えた猶予の時間は、実際長引いていた。そういう中断は夜戦にありがちなことで、更に激しい襲撃が続いて起こるのが常である。
「では、」とガヴローシュは言った。「明日の朝その手紙を持って出ることにしたら?」
「それでは間に合わない。防寨はたぶん包囲され、街路には皆番兵が置かれて、もう出られはしない。今すぐに行ってくれ。」
 ガヴローシュは答えに窮して、当惑したように耳をかきながら決心しかねて立っていた。するうちに突然彼は、いつもの小鳥のような敏捷《びんしょう》さで手紙を引っ
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