sぼうさい》に沿って忍んでゆき、舗石《しきいし》で囲った炬火《たいまつ》がともされてる所まで達したのだった。そして炬火を引きぬき、そこに火薬の樽を置き、積み重った舗石をその下に押しやると、直ちに樽は恐ろしくも彼の意のままに底がぬけた。それだけのことを、マリユスはただ身をかがめてまた立ち上がるまでの瞬間にしてしまったのである。そして今や、国民兵も市民兵も将校も兵士も、皆防寨の一端に集まって、茫然《ぼうぜん》としてマリユスをながめた。マリユスは舗石の上をふまえ、炬火を手にし、最後の決心に輝いたおごそかな顔をもたげ、こわれた火薬の樽が見えてる恐るべき堆積物の方へ炬火の炎をさしつけ、人を慄然《りつぜん》たらしむる叫びを発したのである。
「退け、防寨を爆発させるぞ!」
 マブーフ老人のあとに防寨の上につっ立ったマリユスこそは、老いたる革命の霊の後に現われた革命の霊であった。
「爆発さしてみろ!」とひとりの軍曹が言った。「きさまもいっしょだぞ!」
 マリユスは答えた。
「むろん俺《おれ》もいっしょだ。」
 そして彼は炬火を火薬の樽に近づけた。
 しかしその時にはもう、砦の上にはだれもいなかった。襲
前へ 次へ
全722ページ中664ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング