レうさい》の上に並んでる兵士や民兵の面前に身を曝《さら》した。
 すべてそれらのことは、混戦の前における異様な恐ろしい荘重さをもって、平然となされたのである。両軍は互いに銃をさしつけてねらい合い、互いに話し合えるほど間近に対峙《たいじ》した。かくてまさに火花が散らんとした時、首当てと大きな肩章とをつけたひとりの将校が、剣をさし出して言った。
「降伏しろ!」
「打て!」とアンジョーラは言った。
 両方から同時にいっせい射撃が起こった。そしてすべては煙の中に葬られた。
 息をつまらせるばかりのはげしい辛《から》い煙で、その中には瀕死《ひんし》の者や負傷した者らが横たわって、弱い低いうなり声を発した。
 煙が散ってからながめると、両軍とも人数がまばらになっていたけれども、なお同じ位置にふみ止まって、黙々のうちに再び銃に弾をこめていた。
 すると突然、一つの声が響き渡って叫んだ。
「退け、防寨を爆破させるぞ!」
 すべての者はその声の方にふり向いた。
 マリユスは広間にはいり、そこにある火薬の樽《たる》を取り上げ、それから射撃の煙と砦《とりで》のうちに立ちこめてる暗い靄《もや》とに乗じて、防寨
前へ 次へ
全722ページ中663ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング