t老人にはだれもほとんど注意を向ける者はいなかったが、老人はやはり一群の中に交じっていたのである。彼は居酒屋の階下の広間にはいって、勘定台の後ろに座を占めて、そこで言わば自分で自分を埋没さしてしまった。もはや何物をも見も考えもしていないかのようだった。クールフェーラックと他の数名の者は、二、三度彼のそばに寄ってゆき、危険を知らせ、帰ってゆくように勧めたが、彼にはその言葉も聞こえないかのようだった。人から話しかけられない時には、だれかに返事でもしてるように脣《くちびる》を動かしていたが、人が何とか言葉をかけると、その脣はすぐに動かなくなり、その目はもう死んだもののようになった。防寨《ぼうさい》が攻撃さるる数時間前から、ずっと一定の姿勢を保ったままで、両手の掌《てのひら》を両膝《りょうひざ》につき、絶壁の下をのぞき込むがように頭を前に差し出していた。どんなことがあっても彼はその姿勢を変えず、心は防寨の中にはないかのようだった。各人が戦闘位置についた時、その下の広間に残っているのはただ、柱に縛りつけられたジャヴェルと、サーベルを抜いてジャヴェルの番をしてるひとりの暴徒と、後はマブーフだけだっ
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