桙ェ鳴った。アンジョーラとコンブフェールとは、カラビン銃を手にして、大きい方の防寨《ぼうさい》の切れ目のそばにすわっていた。彼らは一言も口をきかずに、最もかすかな遠い軍隊の行進の音をも聞きもらすまいとして、じっと耳を澄ましていた。
突然、そのすごい静けさの中に、サン・ドゥニ街から来るらしい朗らかな若い快活な声が起こって、「月の光りに[#「月の光りに」に傍点]」の古い俗謡の調子で、鶏の鳴き声のような一語で終わってる次の歌をはっきり歌い始めた。
[#ここから4字下げ]
顔には涙。
どうだいビュジョー([#ここから割り注]訳者注 フランスの元帥[#ここで割り注終わり])
お前の憲兵|俺《おれ》に貸せ、
奴《やつ》らに一言言ってやる。
青い軍服に、
軍帽の牝鶏《めんどり》、
これぞ郊外、
コ、コケコッコー。
[#ここで字下げ終わり]
ふたりは手を握り合った。
「ガヴローシュだ。」とアンジョーラは言った。
「われわれに合い図をしているんだ。」とコンブフェールは言った。
駆け足の音がひっそりした街路に起こって、軽業師《かるわざし》のように敏捷《びんしょう》な者が乗り合い馬車の上によじ上っ
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