轤黷スだろう。それがすなわち防寨《ぼうさい》のある場所だった。その他は靄《もや》深い重々しい痛ましい茫漠《ぼうばく》たる闇《やみ》で、その上に高く、サン・ジャックの塔や、サン・メーリーの会堂や、また人工のために巨人となり更に夜のために妖怪となってる二、三の広壮な堂宇が、気味悪い不動の姿をしてそびえていた。
 寂然《せきぜん》たる恐ろしいその迷宮の周囲、人の行ききはまだ絶えていず、わずかな街灯がまだともってる町々には、サーベルや銃剣の金属性の光や、砲車の重い響きや、刻々に大きくなってゆく黙々たる軍隊の蝟集《いしゅう》など、すべて暴動の周囲を徐々にとり囲み引き締めてゆく恐るべき帯が、上からはっきり見て取られただろう。
 攻囲された一郭は、もはや一種の恐ろしい洞窟《どうくつ》にすぎなかった。そこではすべてが眠っているかあるいは身動きもしないでいるように思えた。そして今述べたとおり、どの街路も皆ただ闇の中に包まれていた。
 それこそ獰猛《どうもう》な闇であって、至る所に罠《わな》があり、至る所に何とも知れぬ恐るべき障害物があり、そこにはいりこむのは恐ろしく、そこに止まるのは更に恐怖すべきことで
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