「ち》で山出し女どもの中にひとりのヴィーナスを見いだした宦官《かんがん》の長のようでもあり、三文絵の中にラファエロの一枚を掘り出した美術愛好者のようでもあった。物をかぎ分ける本能も、物を考察する知力も、彼のうちのすべてが働いていた。ガヴローシュに一大事が起こったことは明らかだった。
 アンジョーラがやってきたのは、かく彼が最も考えあぐんでる時だった。
「お前は小さくて人目につかないから、」とアンジョーラは言った、「防寨《ぼうさい》から出て、人家に沿って忍んでゆき、方々を少し見回って、どんな様子だか僕に知らしてくれ。」
 ガヴローシュはすっくと身を伸ばした。
「小僧も何かの役には立つんだね。結構だ。行ってこよう。だがね、小僧に安心できても、大僧には安心できねえよ。」
 そしてガヴローシュは、頭を上げ声を低め、ビエット街ではいってきた男を指さしながら言い添えた。
「あの大僧がわかるかい。」
「それがどうした?」
「あいつは回し者だ。」
「確かか。」
「半月ほど前に、俺《おれ》がロアイヤル橋の欄干で涼んでると、耳をつかまえて引きおろした奴《やつ》だ。」
 アンジョーラはすぐに浮浪少年のもとを
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