Bそれから、男が腰をおろした時、ガヴローシュは突然立ち上がった。もしその以前に男の様子をうかがったら、彼が特別の注意をもって防寨《ぼうさい》の中や暴徒らの間を観察してるのが見られたはずである。しかし室の中にはいってきてからは、何か深く考え込んで、もう周囲に行なわれてることを少しも見ないがようだった。浮浪少年はその考えにふけってる男に近寄り、眠ってる者をさますのを恐れでもするように爪先《つまさき》で、そのまわりを歩き始めた。と同時に、厚かましくかつまじめな、軽快でかつ考え深い、快活でかつ鋭い、彼の子供らしい顔には、老人らしい渋面が浮かんだ。それはこういう意味だった。「なあに! ――そんなことがあるもんか――俺《おれ》の見違いだ――夢を見てるんだ――そんなことがあろうか――いやあるはずはない――でもそうだ――いやそうじゃない。云々。」ガヴローシュは踵《かかと》の上に身を揺すり、ポケットの中に両手を握りしめ、小鳥のように首を振り、下脣《したくちびる》をつき出して慧敏《けいびん》らしい脹《ふく》れ面《つら》をした。彼はびっくりし、不安心で、半信半疑で、気迷っていた。その顔つきは、奴隷市《どれい
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