Bしかし僕がもし金持ちであったら、世の中に貧乏な者をなくしてみせる。だれでも酒が飲めるようにしてみせる。おおもし善良なる心の者をしてふくれたる財布を持たしめば、万事はいかにうまくゆくことであろうぞ! ロスチャイルドの財産を有するイエス・キリストを僕は想像する。いかに多くの善を彼はなすであろう! マトロート、僕を抱け。お前はあでやかでしかも臆病だ。お前の頬《ほお》は妹の脣《くち》づけを呼び、お前の脣《くち》は恋人の脣づけを招く!」
「黙れ、酒樽《さかだる》めが!」とクールフェーラックは言った。
グランテールは答えた。
「僕はカピトゥールにして詩花会の主脳だ!」([#ここから割り注]訳者注 カピトゥールはツールーズの市吏員の古称で、またこの市には、毎年一回詩花会という、詩文の懸賞競技会が開かれていた[#ここで割り注終わり])
手に銃を持って防堤の上に立っていたアンジョーラは、その厳乎《げんこ》たる美しい顔を上げた。読者の知るとおりアンジョーラにはスパルタ人の面影と清教徒の面影とがあった。テルモピレーにてレオニダスとともに死し、クロンウェルとともにドロゲダの町を焼き払うのに、彼はふさわし
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