ゥった。むしろ彼は驚くほど快活になっていて、ボシュエとジョリーとを相手にしていた。彼らは祝杯を上げた。グランテールは法外に強調した言葉と思想とに、大げさな身振りをさえ添えていた。彼は鹿爪《しかつめ》らしく左の拳《こぶし》を膝《ひざ》につき、腕を直角にまげ、首飾りを解き、腰掛けにどっかとまたがり、なみなみとついだ杯を右手に持ち、そして肥《ふと》った女中のマトロートにこういう荘厳な言葉を浴びせかけた。
「宮殿の扉《とびら》を開けよ、すべての者をアカデミー会員たらしめよ、そしてユシュルー夫人を抱擁するの権利を有せしめよ。さあ飲むべしだ。」
 そして彼はユシュルー上《かみ》さんの方を向いて付け加えた。
「時代の箔《はく》をつけた古代の婦人よ、近くに寄りたまえ、汝の顔をわれにながめしめよ!」
 ジョリーは叫んでいた。
「バトロート、ジブロット、ぼうグランテールに酒をどばせるな、ばかな金ばかり使ってる。今朝からぶちゃくちゃに二フラン九十五サンティーブ飲んじばったぞ。」
 グランテールはまた言っていた。
「予が許しを待たずして星をもぎ取り、蝋燭《ろうそく》の代わりに卓上に置きしは、たれの仕業《しわざ
前へ 次へ
全722ページ中584ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング