轤ネい葡萄酒《ぶどうしゅ》だけでは満足できなくなっていた。葡萄酒は本当の酒飲みに対しては、ただ味の上の成功をしか博しない。およそ酩酊《めいてい》には、黒い幻覚と白い幻覚とがある。葡萄酒は白い幻覚である。グランテールは勇敢な夢食家であった。恐るべき酩酊《めいてい》の暗黒が前にほの見えても、立ち止まるどころかかえってそれにひきつけられた。そこで彼は葡萄酒《ぶどうしゅ》の壜《びん》をすて、ビールのコップを取り上げた。ビールのコップは深淵《しんえん》である。そして阿片《あへん》もハシシュも手に入れることができなかったので、彼は頭の中に暗黒を満たさんために、ブランデーと強ビールとアブサントとの恐るべき混合酒、ひどい昏睡《こんすい》を起こさすべきものに、手を伸ばした。魂の鉛を作るものは、ビールとブランデーとアブサントとの三つの湯気である。それは三つの暗黒で、天の蝶《ちょう》もその中にはおぼれてしまう。そしてそのぼんやり蝙蝠《こうもり》の翼に凝集した膜質の煙の中に現わるるものは、眠れるサイキーの上に飛ぶ夢と夜と死との黙々たる三魔神である。
 しかしグランテールはまだそういう痛ましい状態には達していな
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