ス待された。亭主のユシュルーは好人物だった。
 まさしくユシュルーは好人物で、口髭《くちひげ》まではやしていた。おもしろい変人だった。いつもふきげんそうな顔つきをし、客を威嚇《いかく》しようとでも思ってるかのようで、はいって来る人々に乱暴な言葉を浴びせ、料理を食わせるというよりむしろ喧嘩《けんか》を売りつけようとしてるかのようだった。それなのに、あえて言うが人々はいつも歓待された。その変わった調子はかえって店に客を呼び、青年らを引きつけた。「まあ亭主のユシュルーがどなるのを見にきてみたまえ、」と彼らは言った。彼はもと撃剣の先生だった。彼はよくだしぬけに笑い出した。大声でべらんめえだった。外見は鹿爪《しかつめ》らしく、内部はおどけていた。ただ人を嚇《おど》かしてみようとばかりしていた。ピストルの形をした煙草入《たばこい》れみたいな男だった。その爆発は嚔《くしゃみ》と同じだった。
 女房のユシュルー上《かみ》さんというのがまた、髯《ひげ》のある醜い女だった。
 一八三〇年ごろ、亭主のユシュルーは死んだ。そして彼とともに「鯉《こい》の肉料理」の秘法もわからなくなってしまった。けれども寡婦《か
前へ 次へ
全722ページ中562ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング