uーフ老人は頭を上げた。ひとりの園丁が通るのを見て彼は尋ねた。
「あれは何かね。」
園丁は鍬《くわ》をかついだまま、きわめて平気な調子で答えた。
「暴動ですよ。」
「なに、暴動?」
「ええ。戦《いくさ》をしています。」
「何でまた戦をするんだ。」
「さあなんだか。」と園丁は言った。
「どっちの方だ。」
「造兵廠《ぞうへいしょう》の方です。」
マブーフ老人は家に入り、帽子を取り、小わきにはさむべき書物を機械的にさがしたが、一冊もなかった。「ああそうだった!」と彼は言った。そして我を忘れた様子で出て行ってしまった。
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第十編 一八三二年六月五日
一 問題の表面
暴動の要素は何であるか? 何もないとも言えるし、あらゆるものだとも言える。しだいに発してくる電気、突然ほとばしり出る炎、彷徨《ほうこう》してる力、過ぎゆく息吹《いぶき》、などからである。この息吹は、思索する頭、夢想する脳、苦しむ魂、燃え立つ熱情、喚《わめ》き立てる悲惨、などに出会って、それらを運び去る。
どこへ?
どこへというあてはない。国家や法律や他人の繁栄と横暴などをよぎって、どこ
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