゙は喜びに震えながらその手紙をプリュタルク婆さんに見せた。「これで助かった!」と彼は言った。定日に彼は大臣の家へ行った。そして自分の皺《しわ》くちゃになった襟飾《えりかざ》りや、角張った大きな古上衣や、やたらに靴墨《くつずみ》を塗りたてた靴などが、接待人らを驚かしたことを見て取った。だれも彼に言葉をかけなかった。大臣すら言葉をかけなかった。十時ごろになって、なお何かの挨拶《あいさつ》を待っていると、胸をあらわにした近寄れそうにもない美しい大臣夫人が、人に尋ねている声を聞いた、「あのお年寄りは何という人ですか?」彼は徒歩で、ま夜中に、雨の降る中を自分の家に帰ってきた。しかもそこへ行く時の馬車代を払うためにエルゼヴィル版の書物を一冊売ったのである。
 毎晩寝る前に、彼はディオゲネス[#「ディオゲネス」に傍点]・ラエルチオス[#「ラエルチオス」に傍点]の数ページを読む習慣になっていた。その書物の原文の妙味を味わい得るくらいにはギリシャ語の力があった。今ではもうそれ以外に何の楽しみもなくなっていた。数週間過ぎ去った。すると突然プリュタルク婆さんが病気になった。パン屋からパンを買う金もないことよ
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