ノして戻ってきた。古本屋は彼が是非とも売らなければならないのを見て取って、二十フランもしたものを二十スーくらいに買い取った。時とすると同じ店でそういう目に会うこともあった。一冊一冊と蔵書は減っていった。おりにふれて彼は言った、「だが私はもう八十歳だから。」それはあたかも、書物が尽きない前に自分の余生が尽きることをひそかに望んでいるようだった。悲しみは増していった。けれども一度彼に喜ばしい事が起こった。彼はロベール・エスティエンヌ版の書物を一冊持って出かけ、マラケー河岸でそれを三十五スーに売り、そしてグレー街で四十スーで買ったアルド版の書物を一冊持って帰ってきた。「私は五十スー借りた、」と彼は顔を輝かしながらプリュタルク婆さんに言った。その日彼は夕食をしなかった。
彼は園芸協会にはいっていた。会員は皆彼の貧窮を知っていた。会長は彼を訪れてき、彼のことを農商務大臣に話してやろうと約束し、そして実際それを果たした。大臣は叫んだ。「ははあなるほど、よくわかった。老人で、植物学者で、おとなしい好人物だと。何とかしてやらずばなるまい!」その翌日、マブーフは大臣邸へ晩餐《ばんさん》の招待を受けた。
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