スは冷淡であることを彼は感じた。内心はいかにもやさしく悲しいのに外部の態度は冷酷でしかあり得ないことを感ずるのは、老人にとってたえ難いいら立ちの種だった。苦々《にがにが》しい気持ちが彼に戻ってきた。彼は気むずかしい調子でマリユスの言葉をさえぎった。
「では何のためにきたんだ?」
 その「では」という言葉は、わしを抱擁しにきたのでないなら[#「わしを抱擁しにきたのでないなら」に傍点]という意味だった。マリユスは青ざめて大理石のような顔をしてる祖父をながめた。
「あの……。」
 老人は酷《きび》しい声で言った。
「わしの許しを願いにきたのか。自分の悪かったことがわかったのか。」
 彼はマリユスを正道に引き戻してやったのだと思っていた、「子供」が我《が》を折りかけてるのだと思っていた。マリユスは身を震わした。祖父が求めているのは父を捨てることであった。彼は目を伏せて答えた。
「いいえ。」
「それでは何の用だ?」と老人は憤怒に満ちた悲痛の情を以って急《せ》き込んで叫んだ。
 マリユスは両手を握り合わせ、一歩進み出て、弱い震え声で言った。
「あの、少しお慈悲を。」
 その言葉はジルノルマン氏の
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