ソ着いたまじめなしかも妙に悲しげな顔だけがはっきり見えていた。
ジルノルマン老人は驚きと喜びとでぼんやりして、あたかも幽霊の前に出たように、ただぽーっとした光を見るきりで、しばらく身動きもできなかった。彼は気を失わんばかりであった。彼は眩惑《げんわく》しながらマリユスを見た。確かに彼だった、確かにマリユスだった。
ついにきた、四年の後に! 彼は言わば一目でマリユスの全部を見て取った。マリユスは美しく、気高く、りっぱで、大きくなり、一人前の男になり、申し分のない態度になり、みごとな様子になっていた。彼は両腕をひろげ、その名を呼び、飛びつきたいほどだった。彼の心は喜びに解け、愛のこもった言葉は胸いっぱいになってあふれかけた。ついにその愛情はわき上がって、脣《くちびる》まで上ってきた。しかし常に反対の道をゆく奥底の性質のために、脣からは荒々しい言葉が出た。彼はだしぬけに言った。
「何しにここへやってきた?」
マリユスは当惑して答えた。
「あの……。」
ジルノルマン氏は自分の腕にマリユスが身を投じてくるのを欲したであろう。彼はマリユスにもまた自分自身にも不満だった。自分は粗暴でありマリ
前へ
次へ
全722ページ中448ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング