ニ既に一度口をきいた第二の男は言った。「切るに音もせず骨も折れねえ。」
 それまで黙っていた六番目の男は、一時間前にエポニーヌがしたように、鉄門を調べはじめ、鉄棒を一本一本つかんで、気をつけてそれを揺すってみた。そしてついにマリユスが動かした棒の所まできた。男はそれをつかもうとした。その時突然影の中から一本の手が出て、男の腕を払いのけた。それから男は激しく胸のまんなかを押し戻され、低いつぶれた声を聞いた。
「犬がいるよ。」
 同時に男は、色の青いひとりの娘が自分の前に立ってるのを見た。
 男は意外事から受ける一種の動乱を感じた。彼は恐ろしく身の毛を逆立てた。およそ不安を感じてる猛獣ほど見るに恐ろしいものはない。おびえてる猛獣の様子はまた人を脅かすものである。男は後ろに退《しざ》ってつぶやいた。
「なんだ、この女《あま》は?」
「お前の娘だよ。」
 実際それは、エポニーヌがテナルディエに口をきいているのだった。
 エポニーヌが出てきたのを見て、他の五人の男は、すなわちクラクズーとグールメルとバベとモンパルナスとブリュジョンとは、音もさせず、急ぎもせず、口もきかず、闇夜《やみよ》の男に特有
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