Bけれども、清浄さに酔っている心から気づかれずに、忘るべからざる本性は常にそこにあるものである。本性はその動物的なまた崇高な目的を持ってそこに存している。魂はいかに潔白であろうとも、最も清い交わりのうちにも、恋人同志と朋友《ほうゆう》同志とを区別する神秘な讃《ほ》むべき色合の差を、人は感ずるものである。
 彼らは互いに欽慕《きんぼ》し合った。
 恒久にして不変なるものも存在する。互いに愛し、互いにほほえみ、互いに笑い、脣《くちびる》をちょっとゆがめては互いにすねてみ、手の指を組み合わし、へだてなくささやきかわす。しかもそれは永遠を妨げないのである。ふたりの恋人は、夕暮れのうちに、薄暮のうちに、見えざるもののうちに、小鳥とともに、薔薇とともに身を隠し、目の中に心をこめて影のうちで魅惑し合い、互いにささやきかわし耳語し合う。そしてその間|星辰《せいしん》の広大なるひらめきが無限の空間を満たしている。

     二 恍惚《こうこつ》たる至福

 ふたりは幸福に酔い茫然《ぼうぜん》として日を送っていた。ちょうどその月にパリーを荒していたコレラ病にも気を止めなかった。彼らは何事もみな打ち明け合
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