る。実際それは、汚水だめのうちから引き出してきた一種の嫌悪《けんお》すべき闇夜《やみよ》の獣かとも思われる。刺《とげ》を逆立てた恐るべき生きた藪《やぶ》が、身を震わし、動き回り、のたうち回って、暗黒を求め、恐ろしい姿をし、目を怒らしているのを、眼前に見るかとも思われる。ある言葉は爪牙《そうが》に似、ある言葉は濁り血走った目に似、またある句は蟹《かに》の鋏《はさみ》のように動いてるようでもある。すべてそれらは、混乱のうちに形造られてる事物の嫌忌すべき活力に生きているのである。
 けれども、嫌悪のゆえに研究を排し去るのいわれがあるだろうか。病気は医者を遠ざけるのいわれがあるだろうか。蝮《まむし》や蝙蝠《こうもり》や蠍《さそり》や蚰蜒《げじげじ》や毒蜘蛛《どくぐも》などを研究することを拒み、「実にきたない!」と言いながら、それらを闇のうちに投げ捨てる博物学者を、人は想像し得らるるか。隠語から顔をそむける思想家があるとすれば、それは潰瘍《かいよう》や疣《いぼ》などから顔をそむける外科医のごときものである。言語上の一事実を調べるに躊躇《ちゅうちょ》する言語学者のごときものであり、人類の一事実を
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