やあ、」と彼は言った、「親父《おやじ》だな。……なにかまうこたあねえ。」
そして綱を口にくわえ、思い切って上り始めた。
彼は廃屋の頂上に上りつき、その古い壁にまたがり、窓の一番上の横木に綱をしっかりと結びつけた。
それから間もなく、テナルディエは街路に出ていた。
街路の舗石《しきいし》に足を触るるや、危険の外に脱したのを感ずるや、彼はもう疲れても凍えても震えてもいなかった。ようやく脱《のが》れてきた恐ろしいことどもは煙のように消えてしまって、異常な獰猛《どうもう》な知力がよみがえり、自由にすっくと立ち上がって前に進もうとしていた。そして彼が発した最初の言葉はこうだった。
「ところで何奴《どいつ》を食ってやろうかね。」
その言葉の意味は明らかに、殺し屠《ほふ》りはぎ取るというのをいっしょにしたものであることは、説明するまでもない。食う[#「食う」に傍点]の真の意味は呑噬《どんぜい》する[#「する」に傍点]というのである。
「うまく身を隠そうじゃねえか。」とブリュジョンは言った。「手早く話をきめて、すぐに別れるとしよう。プリューメ街にうまそうな仕事が一つあったがね。寂しい通りで、
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