ぶん昔フォルス公爵の料理場の煙筒だったものであろうが、暖炉の大きな煙筒が、一階から五階まで通っていて、各寝室をすべて二つに区切り、平たい柱のようにしつらえてあって、それから屋根までつきぬけていた。
 グールメルとブリュジョンとは同じ寝室にはいっていた。そして用心のため下の寝室に入れられていた。ところが偶然にも、彼らの寝台の頭部は暖炉の煙筒に接していた。
 テナルディエはちょうど、望楼と言われた上層のうちにいて、彼らの頭の上になっていた。
 キュルテュール・サント・カトリーヌ街に足を止める通行人には、消防夫|屯所《とんしょ》の向こう、湯屋の表門の前に、花卉《かき》や盆栽がいっぱい並べてある中庭が見える。その中庭の奥には、緑の窓の戸で風致を添えた白い小さな丸屋根の家が両翼をひろげて、ちょうどジャン・ジャック・ルーソーの田園の夢想を実現したように建っている。しかし今から十年前までは、その丸屋根の家の上に高く、黒い大きな恐ろしい裸壁が立っていて、家はそれによりかかったようになっていた。それはフォルス監獄の外回りの路地の壁だった。
 丸屋根の背後の壁はちょうど、ベルカン([#ここから割り注]訳者
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