き回った。
象の背中から落ちた破片は、腹部の凹所《おうしょ》を満たしていたので、歩いてもちょうど床《ゆか》の上のような具合だった。
小さい方は兄に身を寄せて、半ば口の中で言った。
「暗いんだね。」
その言葉はガヴローシュの激語を招いた。ふたりの子供の狼狽《ろうばい》してる様子を見ると、少し押っかぶせてやる必要があった。
「何をぐずぐずぬかすんだ?」と彼は叫んだ。「おかしいというのか。いやだと言うのか。お前らはテュイルリーの御殿にでも行きてえのか。ばかになりてえのか。言ってみろ。覚えておれ、俺《おれ》はたわけ者じゃねえんだぞ。お前らはいったい、法皇の小姓みてえな奴《やつ》なのか。」
少し手荒い言葉もこわがってる時には効果がある。それは心を落ち着かせる。ふたりの子供はガヴローシュの方へ近寄っていった。
ガヴローシュはその信頼の様子に年長者らしく心を動かされて、「厳父から慈母に」変わり、年下の方に言葉をかけてやった。
「ばかだな。」と彼は甘やかすような調子に小言《こごと》を包んで言った。「暗いのは外だぜ。外には雨が降ってるが、ここには降っていない。外は寒いが、ここには少しの風もない
前へ
次へ
全722ページ中292ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング