ぐ》いまれなる青年であり[#「いまれなる青年であり」に傍点]、類いなき王侯である[#「類いなき王侯である」に傍点]。」
 そして右の言葉はまた、一字をも削りもしくは加えないでそのままに、ルイ・フィリップにあてはまるものである。
 平等の王侯であり、おのれのうちに王政復古と革命との矛盾をいだき、革命党の不安な一面を有するとともにそれがかえって統治者としての安定となる、そういう点にこそ一八三〇年におけるルイ・フィリップの幸運はあった。事変に対してかくばかり完全に順応した人物はかつて存しなかった。人物と事変とが互いに入り込んで、そこに一つの具体化が成された。ルイ・フィリップは実に一八三〇年の化身である。その上彼は王位につくに大なる便宜を持っていた、すなわち亡命ということを。彼はかつて追放されて、放浪の貧しい日々を送った。自ら働いて食を得た。フランスの最も富裕な采地《さいち》の領主であった彼は、スウィスにおいては食に代えるために古い馬を売り払った。ライヘナウにおいては、自ら数学の教授をし、一方妹のアデライドは刺繍《ししゅう》をし裁縫をした。国王たる身分にそういう思い出が伴うことは、中流民らを心
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