たりをすぐ前のパン屋の店に押し込み、帳場に銅貨を置きながら叫んだ。
「おい、パンを一スー。」
主人と小僧とを兼ねてるそのパン屋は、パンの切れとナイフとを取り上げた。
「三片《みきれ》にしてくれ。」とガヴローシュは言った。そしてしかつめらしくつけ加えた。
「三人だからな。」
そしてパン屋が三人の客の様子をうかがって黒パンを取り上げたのを見て、彼は鼻の穴に深く指をつっ込み、あたかも拇指《おやゆび》の先に一摘まみのフレデリック大王の嗅煙草《かぎたばこ》でも持ってるようにおごそかに息を吸い込んで、それからパン屋にまっ正面から次の激語を浴びせかけた。
「そりゃんだ?」
読者はガヴローシュがパン屋に浴びせかけたその一語を、ロシアかポーランドあたりの言葉だろうと思ったり、あるいは曠野《こうや》のうちに大河の一方から他方へ呼びかわすアメリカ土人の粗野な叫びだろうと思うかもしれないが、実は読者自身が日常使ってる言葉で、「それはなんだ?」という句の代わりになるものだった。パン屋はそれをよく理解して答えた。
「なにこれはパンで、中等のうちで一番いい品だよ。」
「すすけたやつとでも言うんだろう。」とガヴ
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