少年ガヴローシュはそれに深く見とれてるようなふうをしていた。しかし実際は、店の中をうかがっているのであって、店先にある石鹸《せっけん》の一片でも「ごまかし」て、場末の「床屋」に一スーばかりにでも買ってもらおう、というくらいのつもりだった。彼は何度もそういう一片で朝飯にありついたことがあった。彼はそういう仕事に得意で、そのことを「床屋の髯《ひげ》をそる」と称していた。
 人形を見、また一片の石鹸を偸見《ぬすみみ》しながら、彼は口の中でこうつぶやいた。「火曜日。――火曜日じゃない。――火曜日かな。――火曜日かも知れん。――そうだ、火曜日だ。」
 その独語は何のことだか人にはわからなかった。
 あるいはもしかすると、その独語は三日前に得たこの前の食事に関することだったかも知れない。なぜならちょうどその日は金曜だったから。
 理髪師は盛んな火のはいってるストーブで暖められた店の中で、客の顔をそりながら、時々じろりと敵の方へ目をやっていた。敵というのはその凍えた厚かましい浮浪少年で、彼は両手をポケットにつっ込んではいたが、その精神は明らかに鞘《さや》を払って一仕事しようとしていた。
 ガヴローシ
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