《ほうじょう》な正直な性質を、聖《きよ》い意志を、大なる悲哀と大なる希望を、思いもだえる心を、また恍惚《こうこつ》たる喜びの発揚を。その手記は何であったか。一つの手紙であった。住所もなく、あて名もなく、日付もなく、署名もないものであり、至急なものではあるが私心なきものであり、真実で成り立った謎《なぞ》であり、天使に運ばれ処女に読まれんために書かれた愛の使命であり、この世の外でなされる会合であり、影に向かって送られた幻のやさしい便りだった。手紙の主《ぬし》は、遠く離れた静かな悩める男であって、まさに死のうちに身をのがれんとしているかのようであり、しかも見るを得ない女のもとへ、宿命の秘密を、人生の鍵《かぎ》を、愛を、贈ってよこしたのである。それは足を墓の中に踏み入れ指を天に差し上げて書かれたものであった。紙の上に一つずつ落とされていったそれらの言葉は、言わば魂の点滴とも言うべきものであった。
 さてそれらのページは、いったいだれから贈ってきたものであるか、だれがそれを書いたのであるか?
 コゼットは少しも疑わなかった。ただひとりの人である。
 彼!
 彼女の心のうちには再び日がさしてきた。
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