調を写すのはいやなことであるから。)
沈思の癖があり夜の散歩を好んでいたジャン・ヴァルジャンは、夜遅くしか帰ってこないこともしばしばあった。
「トゥーサンや、」とコゼットは言った、「晩にはせめて庭の方の雨戸には閂をさしてよく締まりをしておいたでしょうね、そして締まりの鉄の輪にはよく釘《くぎ》をさして。」
「ええ御安心なさいませ、お嬢様。」
トゥーサンはいつもそれを怠りはしなかった。コゼットもそれはよく知っていた。しかし彼女はなおつけ加えて言わざるを得なかった。
「こちらはほんとに寂しいからね。」
「寂しいと申せば本当にそうでございますよ。」とトゥーサンは言った。「殺されても声さえ立てる暇がないかも知れません。その上|旦那様《だんなさま》もこちらにはおやすみになりませんし。でもお嬢様、御心配なさいますな、窓は皆|牢屋《ろうや》のように固くしめておきますから。女ばかりですもの、恐《こわ》いのはあたりまえでございますよ。まあ考えてもごらんなさいませ、大勢の男が室《へや》にはいってきて、静かにしろなんかと言って、お嬢様の首に切りつけでもしましたら! 死ぬのは何でもありません、死ぬのはかまい
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