はほんとに木靴《きぐつ》がいる。風邪《かぜ》をひくかもしれないから。」
彼女は腰掛けの所へ戻ってきた。
そしてまた腰をおろそうとした時彼女は、今まで自分がいた所にかなり大きな石が一つあるのを見つけた。それは確かに先刻まではなかったものである。
コゼットはその石を見ながら、いったい何のことだろうかと考えた。石はひとりでに腰掛けの上にやってきたものではない、だれかがそこに置いたものである、だれかが鉄の門から腕を差し入れてしたことである、そういう考えが突然浮かんできた。そして彼女はぞっとした。こんどは本当に恐ろしくなった。もう疑う余地はなかった。石が実際ここにあった。彼女はそれに手を触れず、後ろを振り返りもせず、家の中に逃げ込んで、すぐに踏段の所の入り口に、鎧戸《よろいど》をしめ閂《かんぬき》をさし※[#「金+饌のつくり」、第4水準2−91−37]《かけがね》をした。彼女はトゥーサンに尋ねた。
「お父様はお帰りになって?」
「まだでございますよ、お嬢様。」
(われわれは前に一度、トゥーサンはどもりだということを示しておいた。そしてもうその事を繰り返さないのを許してもらいたい。不具者の音
前へ
次へ
全722ページ中232ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング