きり持っていない。だがそれでは結局、水を飲むようになり、黒パンをかじるようになり、手足は鎖につながれて夜通しその冷たさを身に感じながら、板の上にじかに寝るようになるだろう。その鎖を切って逃げ出す、なるほどそれもいい。藪《やぶ》の中を腹ばいになって潜んでゆき、森の中の獣のように草を食うだろう。そしてまたつかまるだろう。それからは、地牢《ちろう》の中で、壁につなぎとめられ、水を飲むにも壺《つぼ》を手探りにし、犬も食わないようなひどい黒パンをかじり、虫に食いちらされた豆を食べて、幾年も過ごすようになるだろう。窖《あなぐら》の草鞋虫《わらじむし》と同じだ。少しは自分の身体をいたわるがいい。かわいそうに、まだごく若いのに、乳母《うば》の乳房を離れて二十年とはならず、母親もまだ生きてるだろう。まあどうか私《わし》のいうことを聞くがよい。お前は上等の黒ラシャを着、漆塗《うるしぬ》りの舞踏靴《ぶとうぐつ》をはき、髪の毛を縮らし、いいにおいの油をぬり、下等な女を喜ばせ、きれいになりたがっている。だがしまいには、頭の毛は短く刈られ、赤い上衣を着せられ、木靴をはかせられるようになる。指に指輪をはめたがっても
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