一片の小さな鋼鉄の時計の撥条《ぜんまい》に歯をつけて鋸《のこぎり》にしたものだ。銅貨の中に隠した針くらいの長さのその鋸で、錠前の閂子《かんし》や、※[#「金+饌のつくり」、第4水準2−91−37]《かきがね》の軸や、海老錠《えびじょう》の柄や、窓についてる鉄棒や、足についてる鉄枷《てつかせ》などを、切らなければならない。そして、その精巧な道具を作り、その驚くべき仕事をなし遂げ、その技術と器用と巧妙と忍耐との奇跡を果たした後、もしそれがお前のやったことだと知れたら、どういう報いがやってくるか。それはただ地牢《ちろう》ばかりだ。そういうのがお前の未来だ。怠惰といい楽しみというものは、何という絶壁だろう。何にもしないということは、痛むべき方針だ。わかるだろうね。社会の財産をあてにしてなまけて暮らすこと、何の役にも立たない生活を送ること、言いかえれば有害な生活をすること、それは人をまっ逆様に悲惨のどん底に投げ込んでしまう。社会の寄食者《いそうろう》になろうとする者こそ不幸だ、ついには有害な寄生虫になってしまう。ああお前は働くことを好まない、うまい酒を飲みうまいものを食い楽に寝ていたいという考え
前へ 次へ
全722ページ中217ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング