に向かって発する賛歌は広大無辺の空間を静めてるかのようであった。東の方にはヴァル・ド・グラース病院の建物が、刃物のような光のある地平線の上に、暗いがっしりした姿を浮き出さしていて、その丸屋根の向こうにはひらめく暁《あけ》の明星がかかっていて、まっくらな伽藍《がらん》からぬけ出してきた霊魂のようであった。
すべては平和で静まり返っていた。大道には人影もなく、ただ下手《しもて》の方に、仕事に出かける一、二の労働者の姿がぼんやり見えていた。
ジャン・ヴァルジャンは側道《わきみち》のうちに、建築材置き場の門の所に置いてある木材の上に腰をおろしていた。彼は顔を往来の方に向け、背中を東に向けていた。そしてやがて出ようとする太陽のことも忘れ、精神は頭に集まって物も見ずあたかも四壁に囲まれたにも等しい深い沈思のうちに陥っていた。およそ瞑想《めいそう》のうちには垂直な瞑想とも称し得べきものがある。その底に陥ると再び地上に戻るには時間を要する。ジャン・ヴァルジャンはちょうどそういう夢想のうちに陥っていた。コゼットのこと、彼女と自分との間に何物もはいってこなければ幸福が長く続くであろうこと、彼女が自分の
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